カスタマーハラスメント(カスハラ)対策は、多くの企業にとって避けて通れない重要な課題となっています。しかし、現状のカスハラ対策やコンサルティングには、いくつかの問題点が指摘されています。その最大の問題は、カスハラの問題が複雑で多岐にわたるにもかかわらず、特定の専門分野に偏ったアプローチが多いことです。包括的で横断的な視点が求められるにもかかわらず、現場では法的、心理的、安全性、組織運営などの観点が個別に取り扱われるケースが少なくありません。本コラムでは、カスタマーハラスメント対策における現状の問題点と、その解決策について考察します。
1. カスタマーハラスメント問題の多面的な特性
カスハラの問題は、単純な一側面では語れない複雑さを持っています。
法的な側面
カスハラは労働法、民法、刑法に違反するケースも少なくなく、法的な知識が欠かせません。対応が不適切だと従業員や企業側が訴訟リスクにさらされる可能性もありますが、基礎的な法律の知識を準備するだけで回避できるものも多々あります。
心理的な側面
カスハラの対応には、被害者である従業員の心理的ケアが必要です。従業員のメンタルヘルスに配慮し、カスハラに対する対処法やストレスマネジメントの知識が重要です。
組織運営とリスクマネジメントの側面
カスハラは一時的な問題ではなく、企業の組織運営全体に影響を及ぼす可能性があります。対策を講じない場合、企業のブランドイメージや従業員の士気、さらには顧客対応全体の質にも悪影響を及ぼすことが考えられます。
安全性の側面
カスハラがエスカレートした場合、従業員や他の顧客の安全に直接関わる問題となる可能性があります。現場での対応や緊急時の安全確保を考慮するため、警備員の配置や防犯機器の設置、緊急時の対応マニュアルの整備が求められます。
このように、カスハラ問題には多様な専門知識が必要ですが、現状では特定の専門家による対策やコンサルティングが中心となっており、包括的な対応が十分に行われていないケースが多いのです。
2. 現状の問題点:特定分野に偏った対策
多くの企業や組織では、以下のような専門分野に偏ったカスハラ対策が行われていることが問題です。
法律専門家による対応: 弁護士や法務部門の専門家がカスハラ対策を担当するケースでは、法的なリスク回避に重点が置かれる傾向があります。しかし、法的手段だけでは従業員の心理的ケアや現場での実践的な安全確保が十分にカバーされません。
心理カウンセラーによる対応: カウンセラーや心理専門家が対応を担当する場合、従業員のメンタルケアに重きを置いた対策が行われますが、法的な対策や組織全体のリスクマネジメントの視点が欠けていることがあります。
セキュリティコンサルタントによる対応: セキュリティ専門家が対策を講じる場合、物理的な安全対策や防犯に焦点が当たる傾向がありますが、法的リスクや心理的ケアの重要性が見落とされることがあります。
これらのアプローチは、それぞれ専門性を持っているため一定の効果を発揮しますが、カスハラ問題の本質的な解決には至りません。特定分野に偏った対策では、カスハラの複雑な側面すべてに対応することは難しいのが現状です。
3. 包括的な対策が求められる理由
カスハラ対策には、各分野の専門知識を統合した包括的なアプローチが求められます。
多角的な視点が必要: カスハラ問題は、顧客、従業員、そして企業の三者間の関係が複雑に絡み合っています。法的、心理的、安全性、組織運営など、異なる観点を統合して対応することで、初めて適切な解決策が見えてきます。
組織全体のリスクを最小化: カスハラに対する適切な対応がなされないと、従業員の離職や訴訟リスク、ブランドイメージの悪化など、組織全体に深刻な影響を与えます。包括的な対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。
従業員の安全と安心の確保: カスハラ対応には、従業員の心理的な安全を確保することが重要です。心理的ケアだけでなく、法的に守られているという安心感や、組織全体で対応策が整備されているという信頼感が従業員の安心感を生み出します。また、安全性の確保は、従業員だけでなく、他の顧客にも安心感を提供する要素となります。
4. 包括的な対策を実現するためのアプローチ
包括的なカスハラ対策を実現するためには、次のようなアプローチが効果的です。
複数の専門家によるチームアプローチ: 法律、心理学、安全性、セキュリティなど、異なる専門分野の専門家が協力して対策を講じることで、各分野の知識を統合した包括的な対策を実現できます。企業内に専門家チームを組織するか、特定分野での対策では効果が限定的であることを理解し、チームで対応する体制を整えている外部の専門家と連携することで、効果的な対策を講じることが可能です。
従業員教育とトレーニング: 包括的なカスハラ対策を実現するためには、従業員自身が各種の対策や対応策を理解し、現場で実践できるようにすることが必要です。定期的な研修やトレーニングを通じて、従業員が法的、心理的、安全性の観点から対応策を学ぶことが重要です。
マニュアルやガイドラインの整備: 包括的なカスハラ対策の実践には、統一されたマニュアルやガイドラインの整備が欠かせません。これにより、現場での対応が一貫し、効果的な対策を講じることができます。また、マニュアルには、緊急時の安全対策に関する項目も含めることで、従業員が安心して対応できる体制を整えます。
まとめ
カスタマーハラスメント対策には、法的、心理的、安全性、セキュリティなど、多様な視点が必要です。しかし、現状では特定の専門分野に偏った対策やコンサルティングが行われているため、カスハラ問題の本質的な解決には至っていないケースが多いです。包括的で横断的な専門知識を活用した対策を導入することで、より効果的で持続可能なカスハラ対策が実現できるでしょう。企業や組織全体で多様な専門家と連携しながら、従業員の安全と安心を守るためのカスハラ対策を進めていくことが重要です。
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