カスタマーハラスメント(カスハラ)は、多くの店舗で日常的に発生する課題ですが、対策が不十分な場合、スタッフの心理的負担や店舗運営に深刻な影響を与えることがあります。一方、戦略的な対応基準やフローを明確にし、適切な教育やケアを施すことで、トラブルを未然に防ぎ、迅速かつ効率的な対応が可能になります。本コラムでは、ある店舗での実例をもとに、カスハラ対策の具体的な改善プロセスをご紹介します。
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カスハラ対策の初期段階での課題
ある店舗では、クレームやカスハラの対応が現場任せとなっており、明確な基準や対応フローがありませんでした。その結果、スタッフがカスハラと通常のクレームを区別できず、すべての対応に過剰な時間と労力を費やしていました。
特に、威圧的な言動や不適切な要求に対して毅然とした対応ができないために、問題がエスカレートするケースが多く見受けられました。また、責任者への報告が遅れ、必要な判断が後手に回ることもありました。これらの問題を受けて、店舗は本格的なカスハラ対策の構築に乗り出しました。
対応基準の明確化
まず取り組んだのは、「カスハラ」と「通常のクレーム」の明確な区別をするための基準作りです。この基準は、法律をベースに店舗運営の実情を踏まえた独自のものとして策定されました。
具体例
• 通常のクレーム:店舗や商品の改善を目的とした建設的な意見。
• カスハラ:威圧的な言動、過度な要求、人格否定を含む言動など。
この基準を設けることで、スタッフが対応の優先順位を判断しやすくなり、効率的な対応が可能となりました。また、法律に基づく基準であるため、スタッフは自信を持って毅然とした対応が取れるようになりました。
対応フローの策定と教育
基準をもとに、具体的な対応フローを構築しました。このフローには以下の要素が含まれます。
1. 初期対応:現場での迅速な判断と適切な対応。
2. 報告手順:責任者への迅速な報告ルートを明確化。
3. 記録:問題の内容や対応経過を記録し、証拠を保全。
さらに、スタッフ教育を強化し、以下のスキルを習得させました。
• 毅然とした対応:道義的謝罪と法的対応の違いを理解し、冷静かつ適切な言動を取る。
• エスカレートを防ぐスキル:状況を冷静に収束させる対話術。
• 判断力の向上:カスハラか通常クレームかを見極める力。
これにより、現場対応力が向上し、責任者への報告がスムーズになることで、全体の対応効率が大幅に改善されました。
スタッフのメンタルケア
カスハラ対応では、スタッフの心理的負担が大きいため、メンタルケアを重視しました。本格的な産業医の導入は将来的な課題として残るものの、まずは以下の取り組みを開始しました:
• 労いや評価:対応スタッフへの労いや賞賛を積極的に行い、心理的な負担を軽減。
• 相談の場の提供:スタッフ同士が気軽にフィードバックや相談を行える場を設置。
• 定期的なケアミーティング:チーム内で対応を振り返り、負担を共有する環境を整備。
これらの取り組みにより、スタッフが孤立することなく、チームとして支え合える環境が整いました。
外部連携体制と基準の設定
さらに、外部の専門機関や相談窓口との連携体制を構築しました。ただし、単に体制を作るだけではなく、以下の基準を設けたことがポイントです。
• 外部相談の判断基準:どの段階で外部機関にエスカレーションするかを明確化。
• 外部との情報共有ルール:プライバシーを保護しつつ、必要な情報を適切に共有。
これにより、外部支援を効果的に活用しながら、店舗全体での対応の質を向上させました。
効果と今後の展望
これらの取り組みにより、店舗では以下のような効果が得られました。
• 対応スピードの向上:基準とフローが明確になり、現場での迷いが減少。
• 負担の軽減:スタッフと責任者の双方の業務負担が減少。
• 信頼の向上:毅然とした対応により、顧客との信頼関係が再構築。
今後は、現場の声を反映しながらさらなる改善を重ね、他店舗への展開を視野に入れています。
まとめ
カスハラ対策の成功には、手段や設備だけでなく、基準・フローの明確化、スタッフ教育、メンタルケア、外部連携の全てが統合的に機能することが求められます。この事例が示すように、戦略的な取り組みを行うことで、現場の負担を減らしつつ、効果的な対応を実現することが可能です。
最後に
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