カスタマーハラスメント(カスハラ)対策は、防犯対策と共通の手順で進めることで、一貫した対策基盤を築き、実効性を高めることが可能です。特に、組織の安全確保における基本的な計画策定の段階では、守るべき対象や脅威の特定、そしてこれらに基づいた対策の範囲とスコープを明確にすることが重要です。これにより、組織内での共通認識が深まり、カスハラや防犯対応が日常的に機能する体制が整います。
カスハラ対策と防犯対策を共通の手順で進める意義
カスハラ対策は防犯対策の一種として考えることができるため、以下の手順に基づき実施することが可能です。また、導入者の状況に応じて、カスハラ対策と防犯対策を一括で実施することも、状況に応じて分けて対応することも可能です。必要に応じて各手順に戻りながら、段階を踏んで柔軟に進めていくことで、現場の実態に即した計画が策定できます。

計画の作成における基本的な手順
防犯の対策と同様、以下の手順で進め、必要に応じて後戻りをしながら修正し、完成させていきます。
防犯対策の計画作成のコラムはこちら
戦略の策定
目的の設定
計画の作成
守るべきものの一覧化
脅威の一覧化
対策の範囲とスコープの明確化
全体像の把握
組織体制の構築
脆弱性の一覧化
対策の策定
評価、改善
評価方法の作成
改善プロセスの構築
今回は、計画策定の第一段階として「守るべきものの一覧化」「脅威の一覧化」「対策の範囲とスコープの明確化」に焦点を当て、カスハラ対策を含む防犯対策全体の有効性を確保するための準備について解説します。
守るべきものの一覧化
カスハラ対策と防犯対策のいずれも、組織内で守るべき対象を明確にしておくことが対策の基礎となります。守るべき対象は、心理的な安全、物理的な安全、または労働環境の健全さなど、さまざまな面にわたります。従業員や施設に対していかに配慮し、どのような形で保護していくかを決定することが重要です。以下は守るべき対象や、対象を検討する上での判断基準の例です。
心理的安全性:従業員が安心して業務を遂行できるよう、心理的な安全を確保します。特に、カスハラの影響で心身に負担を感じないよう、安心して業務に取り組める環境を目指します。
物理的安全性:突発的な危険や暴力行為に備え、適切な防護措置を講じることで、従業員の物理的な安全を守ります。
労働環境の健全さ:安全かつ健全な労働環境を維持するため、従業員のストレス軽減や休憩環境の整備を図り、負担が軽減されるよう努めます。
脅威の一覧化
カスハラや防犯の脅威を明確にすることで、対策の方向性が具体化します。脅威には、カスハラ行為による心理的な負担や、身体的な危険、業務遂行における妨害行為など、複数の側面があります。各脅威についてリストアップし、その種類と危険度を明確にすることで、後の対策策定に活かします。以下は脅威の例です。
心理的脅威:不適切な要求や罵倒、威圧的な態度によって、従業員のメンタルヘルスが損なわれる恐れがあります。
物理的脅威:暴力行為や身体的な圧力が加えられるリスクです。これには、危険を伴う行為や身体接触が含まれます。
業務妨害リスク:過剰な要求や業務に対する妨害行為が続くことで、通常の業務遂行に支障をきたすリスクです。
対策の範囲とスコープの明確化
守るべき対象と脅威の一覧が作成されたら、それに基づいて対策の範囲とスコープを明確にします。これは、対策が適用されるエリアや範囲を明らかにする作業です。すべての状況や場面で同じレベルの対策を講じることは現実的でないため、脅威の発生しやすい場面やリスクの高いエリアにリソースを集中させることが効果的です。カスハラ対策の場合も、特に対応頻度やリスクが高い部門やシチュエーションに優先的な対策を導入します。以下は対策の例です。
優先的な対策エリアの設定:心理的・物理的な負担が大きくなりやすい部署や、直接対応が必要な部門を重点的なエリアとして設定します。
対応範囲の確認:カスハラ対応がどのレベルまで求められるかを具体的に確認し、リソースの最適配分を図ります。
計画策定による効果
この計画の作成段階を通じて、組織内で守るべきものや脅威が明確化され、対策の範囲とスコープが定まることで、効果的かつ持続的な対策を講じるための基盤が整います。防犯対策とカスハラ対策の双方を共通の手順で行うことにより、以下のような効果が期待できます:
組織全体での一貫性:守るべき対象や脅威を把握した上で、全体に一貫した基準が適用されるため、対応に迷いが生じません。
リソースの適切な配分:守るべきものや脅威の特定に基づいてリソースが効率的に配分されるため、重点的に守るべき場所に対策を集中させられます。
従業員の防犯・対策意識の向上:全体像が把握されることで、従業員が安心して業務を行い、対策に一貫して従う意識が強まります。
まとめ
計画の作成段階で守るべきものや脅威を具体的に定めることは、カスハラ対策と防犯対策の効果を高めるための重要な要素です。さらに、これらの対象や脅威に基づいて対策範囲を定めることで、リソースを適切に集中させ、効率的かつ持続的な対応が可能となります。次のステップである組織体制の構築に進むためにも、この段階で全体像がはっきりと把握されることが不可欠です。
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