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従業員教育で防げる内部犯行:対策と注意点

企業にとって、内部犯行は常に大きなリスクです。従業員が関与する犯罪は、外部からの犯罪よりも発見や対応が難しいケースが多いため、特に注意が必要です。しかし、適切な従業員教育を通じて内部犯行を未然に防ぐことが可能です。本コラムでは、従業員教育で防げる内部犯行について、その対策と注意点を解説します。



1. 内部犯行の特徴とリスク

内部犯行とは、従業員や関係者が企業の資産や情報を盗む、損害を与えるなどの犯罪行為を指します。金銭の横領、物品の窃盗、機密情報の持ち出しなどが含まれます。内部犯行が発生すると、企業は金銭的な被害だけでなく、信頼性やブランドイメージにも大きなダメージを受ける可能性があります。


2. 不正のトライアングル理論と内部犯行

不正のトライアングル理論では、動機機会正当化の3つの要素が重なることで、不正行為が発生しやすくなるとされています。これらを踏まえると、内部犯行を防ぐためには、この3つの要素を抑制する教育や対策が必要です。


  • 動機: 従業員が金銭的な問題やストレスを抱えている場合、不正行為の動機となり得ます。従業員の働きやすい環境を整え、適切なサポートを提供することで、動機の発生を防ぎます。

  • 機会: セキュリティ対策が甘いと、不正行為の機会が増えます。業務プロセスの見直しや監視体制の強化、アクセス権限の適切な管理などで、機会を減らすことが重要です。

  • 正当化: 「自分だけは大丈夫」という甘えや、「これくらいなら」といった自己正当化が、不正行為を助長します。教育やコミュニケーションを通じて、正当化の余地をなくすことが効果的です。


3. 従業員教育による内部犯行の防止策

(1)コンプライアンス教育の徹底

従業員には、法的な責任や会社のルール、倫理についてしっかりと教育することが重要です。特に、不正のトライアングル理論の視点を取り入れ、どのような行動が不正行為に該当するのか、またその結果がどのようなリスクをもたらすのかを理解させることで、抑止効果を高めることができます。

(2)セキュリティ意識の向上

従業員に対して、パスワードの適切な管理や機密情報の取り扱い方、社内でのIDカードの使用など、日常的なセキュリティ対策を徹底させることが重要です。例えば、書類の取り扱いや機密情報の保存方法など、日常業務における具体的なリスクを意識させることで、不正行為を抑止できます。

(3)現場での判断力を養う

従業員教育の際には、さまざまな場面での適切な判断力を養うことが大切です。例えば、通常とは異なる行動や兆候に気づいた際に、どのような対応や報告をすべきかを学ぶことで、内部犯行の兆候を早期に察知できます。

(4)定期的な見直しとフィードバック

従業員教育は一度で終わるものではなく、定期的なフィードバックや見直しが必要です。実際に発生した内部犯行事例や、それに対する対応を共有することで、他の従業員も同様の状況に備えることができます。


4. 内部犯行を未然に防ぐための組織的対策

(1)監査体制の強化

内部犯行を防ぐためには、監査体制を強化することが重要です。定期的な内部監査や、従業員の業務プロセスの見直しを行うことで、不正行為の発見や抑止につながります。

(2)匿名での相談・通報体制の整備

従業員が不正行為を見つけた場合に匿名で通報できる仕組みを整えることで、内部犯行の早期発見に役立ちます。通報者を保護するための体制も同時に整えることが重要です。

(3)チームワークの強化

チームワークが強い職場では、従業員同士が自然に監視し合うことになり、不正行為の発生を防ぎやすくなります。日常的に従業員間の信頼関係を築くことで、内部犯行の抑止力を高めることが期待できます。

(4)監視ツールの導入

近年のテクノロジーの進歩により、不正行為を監視するためのツールが数多く登場しています。業務システムのログ管理やアクセス権限の監視、セキュリティカメラの設置など、デジタルと物理の両面から監視体制を強化することで、内部犯行の機会を減らすことが可能です。ただし、監視ツールの導入には従業員のプライバシーに対する配慮が必要です。透明性を持った運用方針を示し、監視が過度にならないよう注意しましょう。

(5)雇用契約書・就業規則の明確化

雇用契約書や就業規則に、従業員の行動規範や不正行為に対する厳格な処分方針を明示することで、内部犯行の抑止力を高めることができます。不正行為が発覚した場合の処分内容や、守秘義務、情報の取り扱いについて具体的に記載することで、従業員に対する抑止効果を持たせることが可能です。また、従業員に対して契約内容を定期的に再確認させることで、法的な責任意識を喚起し、不正行為のリスクを軽減できます。


5. 注意点:従業員教育の過剰な負担を避ける

内部犯行対策を徹底するあまり、従業員に過剰な負担をかけることは避けるべきです。従業員にとって過度なストレスが高まると、逆に内部犯行のリスクが増加する可能性もあります。適切なバランスを保ちながら教育を進めることが重要です。


まとめ

従業員教育は、内部犯行を防ぐための重要な手段の一つです。不正のトライアングル理論に基づくリスクの抑制や、現場での判断力を養うことが、内部犯行の抑止に効果的です。また、組織全体での対策の見直しやフィードバックを継続的に行うことで、より効果的な防犯対策を実現できるでしょう。従業員教育を通じて、犯罪を未然に防ぐ意識を根付かせ、安心して働ける職場環境を築くことが求められます。


最後に、SIPでは、病院をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。

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