情報セキュリティ対策は、組織のデジタル資産や機密情報を保護するための不可欠な取り組みです。しかし、これらの対策は単一の要素で完結するものではなく、技術、法律、運用の3つの観点が相互に補完し合うことで初めて効果を発揮します。
多くの事業者は情報セキュリティ対策が重要であると理解しつつも、範囲があまりにも広く、イメージがわかず、そもそもどのような対策から始めて良いかわからないという人が多いのが現状です。
本コラムでは、まずは皆様に情報セキュリティ対策についての全体像を理解していただくために、技術、法律、運用のそれぞれの観点をふまえ、対策の一例として紹介します。
1. 技術的アプローチ
技術的な対策は、情報セキュリティの基盤です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
• ツール導入: セキュリティソフトウェア、UTM、ファイアウォール、侵入検知・防止システム(IDS/IPS)などの導入。
• 脆弱性診断: システムやアプリケーションの脆弱性を定期的に検査し、修正プログラム(パッチ)を迅速に適用。
• ペネトレーションテスト: 外部からの攻撃をシミュレートすることで、防御体制の強度を確認。
これらの技術的な取り組みは、外部からの攻撃や内部からの不正アクセスを未然に防ぐための「守りの壁」を構築する役割を果たします。
2. 法律的アプローチ
情報セキュリティの取り組みでは、法的側面も非常に重要です。特に、データ保護やプライバシーに関する法令遵守(コンプライアンス)を徹底し、リスクを最小化することが求められます。
法律に基づく対策例
• 雇用契約・就業規則の整備
従業員が個人所有のPCやスマートフォンを業務で使用している場合、これらのデバイスを調査する際のルールが不明確だとトラブルが発生する可能性があります。デバイス提出義務や調査対象範囲を明確化する条項を設けることで、調査の円滑化が図れます。
加えて、証拠隠滅を防ぐために「データ削除ツールの使用を禁止する条項」も有効です。
• 情報漏洩の抑止
機密保持契約(NDA)を締結し、従業員や外部委託業者が守るべき情報取り扱いルールを明確にします。
• データ保持期間の明記
不要なデータを長期間保持することでセキュリティリスクが増加するため、データの保持期間と廃棄プロセスを規則等で規定します。
これらの法整備は、情報漏洩や内部不正が発生した際に迅速かつ適切な対応を可能にするだけでなく、従業員と組織の双方にとって安心できる環境を提供します。
3. 運用的アプローチ
技術や法律を支えるのは、日常的な運用の工夫です。適切な運用を整備することで、情報セキュリティの効果が最大限に発揮されます。
運用の具体例
• ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の導入
情報資産のリスクを特定・管理し、セキュリティポリシーを策定します。定期的なレビューや監査を通じて、セキュリティレベルを維持・向上します。
• 業務フローと報告フローの整備
情報漏洩や不正が疑われる場合の調査手順を具体的に記載し、迅速かつ効率的な対応を可能にします。
• 従業員教育プログラム
従業員が情報セキュリティの重要性を理解し、日常的な行動に反映できるよう、定期的な教育を実施します。
個人所有デバイスの問題
特に注目すべきは、BYOD(Bring Your Own Device)によるセキュリティ課題です。個人所有のデバイスが業務に使用されるケースでは、組織と従業員の間で責任範囲が不明瞭になることがあります。この問題を解決するために、就業規則や契約書の整備とともに、セキュリティソフトのインストールやアクセス制限などの運用ルールを明確化することが求められます。
全体像としての一例
本コラムでは、技術、法律、運用の3つの観点から情報セキュリティ対策の全体像を紹介しましたが、これはあくまで一例に過ぎません。組織の業種や規模、セキュリティリスクの種類によって最適な対策は異なります。そのため、柔軟にカスタマイズ可能な体制を構築し、継続的な改善を行うことが重要です。
まとめ
情報セキュリティ対策を効果的に実施するには、技術的な防御力、法的な基盤、運用的な実効性の3つをバランスよく整える必要があります。特に、法律や運用面の整備は、技術的な対策を活かす土台として不可欠です。
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