1. 初めに
医療現場では、患者やその家族からの過度な要求や理不尽な言動が増加しており、これがカスタマーハラスメントとしての問題となっています。この種のハラスメントは、医療従事者のメンタルヘルスに深刻な影響を与え、医療の質そのものを低下させる要因や、離職率の悪化にもつながります。
カスタマーハラスメントは、本来であれば防犯対策と連携する形で包括的に対処し、単なる応急的な対応ではなく、病院全体の方針に基づいた戦略的な対策をすることが理想です。しかし、コスト面や各施設状況は様々なので、はじめは状況に応じて柔軟に対応するのが良いでしょう。
ここでは病院や医療現場におけるカスタマーハラスメントマニュアルの作成方法のポイントについて説明させていただきます。以下は一例ですので、状況に応じてカスタマイズして作成してください。
2. 防犯戦略やカスタマーハラスメント全体の方針の中にマニュアルが存在することが重要
カスタマーハラスメント対策は、本来であれば病院の防犯戦略の一環として位置づけられるべきです。これにより、医療スタッフの身体的な安全性と心理的安全性の両方が確保され、組織全体で包括的かつ一貫した対応が可能になります。それに応じてマニュアル自体もも防犯対策と統合されていることで、単なる個別の対応策ではなく、病院全体の安全性を包括的に保つツールとなります。しかしながら、施設によっては統合することで抽象的になり理解しにくくなる可能性や、情報量が多くなる可能性もあるため、状況に応じて統合するか分離して作成するかを判断しましょう。
3. 組織体制の全体像(外部含む)を示す図を作成
医療機関内の組織体制だけでなく、外部機関との連携も必要です。カスタマーハラスメント対策は、警察や法律事務所、さらにはセキュリティ事業者、クレーム対応代行業者などとの協力体制が整っていることで、より強力な防御体制を築けます。緊急時の対応も、内部のみならず、外部機関との連携がスムーズに行えるよう、事前に連絡体制や役割分担を明確にしておく必要があります。
4. 計画・方針・施設の環境に則った対応フローの作成
a. 現場の対応フローの作成
医療現場では、迅速で柔軟な対応が求められるため、シンプルかつ実践的な対応フローが必要です。患者やその家族が医療スタッフに対して不当な要求をする場合、現場のスタッフが即座に適切な対応を行えるよう、接客・対話マニュアルやエスカレーション手順を明確にしておくことが重要です。特に安全が脅かされる場合には、即座に通報や避難を行う判断基準を、明確にしておく必要があります。
b. 管理職や病院全体の対応フローの作成
管理職レベルでは、トラブルが発生した際の全体的な対応策が必要です。カスタマーハラスメントの問題がエスカレートした場合、法的な対応が必要になることもあるため、法律事務所や警察との連携を視野に入れた対応フローを策定することが求められます。道義的謝罪、法的対応、外部機関への報告など、対応内容のフローを具体的に記載することが重要です。加えて、事後の振り返りや現場との情報共有フローについても記載しておくことが望ましいでしょう。
5. 現場フローと病院フローのリンクと連携
現場での迅速な対応と、病院全体の管理体制が円滑に連携することが非常に重要です。医療スタッフがハラスメントに直面した際、即座に管理職か会社へ報告し、その後の対応が迅速に行われるよう、報告体制を整備する必要があります。管理職が即座に状況を把握し、適切な指示を出せるよう、報告の流れをシンプルにし、フローに明確に組み込んでおくことが大切です。
6. 外部へのフローのリンクと連携
外部機関との連携は、特に緊急時において重要です。例えば、警察への通報基準や、セキュリティ業者との事前連携を明確にしておくことで、迅速な対応が可能になります。また、法的トラブルやクレームがエスカレートした際に、弁護士などの外部の法律専門家と適切に連携し、早期に問題解決を図るための仕組みを設けることが重要です。
7. 実践訓練、ケーススタディ訓練
対応フローを実際に効果的に運用するためには、定期的な訓練が必要です。特に、カスタマーハラスメントの発生を想定したシナリオに基づいたケーススタディを用いた訓練を行うことで、現場スタッフが適切かつ冷静に対応できる力を養うことが求められます。トラブルが発生した際に即時対応ができるよう、マニュアルに則したケーススタディ訓練を計画的に実施することが重要です。
8. 定期的な見直し、改善
医療現場でのカスタマーハラスメント対策は、日々変化する医療のニーズに応じて見直しが必要です。最新の事例や法改正、最新設備の導入などに基づき、マニュアルや対応フローを定期的にアップデートすることで、より実効性の高い対策を維持します。また、スタッフからのフィードバックを基に、現場での問題点を改善し、常に最新かつ実用的なマニュアルに保つことが重要です。
9. 防犯対策との連携
カスタマーハラスメント対策は、本来であれば防犯対策と連携して考慮されるのが理想です。特に医療現場では、防犯カメラや警備システムの導入が、ハラスメントの未然防止に効果を発揮することも少なくありません。また、日常業務と緊急対応の両面において、スタッフの安全と安心を確保するため、ハラスメント対策と防犯対策の両方が統合されたシステムを構築することが望ましいです。しかし、現実的な予算や割ける時間、施設の状況などに応じて、まずはカスタマーハラスメント対策から始めることも一つの手段でもあります。
10. まとめ
病院におけるカスタマーハラスメント対策マニュアルは、現場での即時対応力や管理職との連携の強化、外部機関との協力体制を整えることに繋がります。ハラスメントに対する対策を強化し、医療従事者が安心して働ける環境を提供することで、サービスの質が向上し、離職率の低下にもつながります。また、防犯対策との連携を図ることで、さらに安全性を高めることができるでしょう。 最後に、SIPでは、病院や学校、店舗事業をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。