病院は、日々多くの患者、医療スタッフ、訪問者が行き交う場所であり、その特性から特別な防犯対策が求められます。医療機関として患者の安全を守るだけでなく、医療スタッフや施設自体を守ることも重要です。また、医療データという非常に機密性の高い情報を扱っているため、物理的な防犯対策だけでなく、サイバーセキュリティ対策も不可欠です。今回は、病院における防犯計画書の作成と具体的な対策について解説します。

1. 目的の設定
防犯計画書の作成において、まず明確な目的を設定することが重要です。病院における防犯の主な目的は、患者とスタッフの安全確保、機密情報の保護、不審者の侵入防止、そして緊急時の迅速な対応です。これらの目的をもとに、病院全体でどのような防犯対策が必要かを計画します。
2. 守るべきものの一覧化
病院で守るべき対象は多岐にわたります。患者、スタッフ、訪問者、設備機器、そして医療データなど、各要素をリストアップし、それぞれに対してどのような脅威が存在するかを整理します。
患者の安全
スタッフの安全
高価な医療機器
薬品や危険物
機密性の高い医療データ
3. 脅威の一覧化
次に、病院において想定される脅威をリストアップします。病院はオープンスペースであり、外部の訪問者や不特定多数の人が出入りするため、不審者の侵入や盗難、暴力行為などが発生するリスクがあります。
不審者の侵入
盗難(医療機器、薬品、個人情報)
暴力行為
カスタマーハラスメント
サイバー攻撃(医療データの漏洩)
※サイバーセキュリティ対策については、専門性が高いため基本的なものの記載にとどめ(場合によっては記載しない)、別途計画を策定するケースが多いです。
4. 全体像の把握
病院全体の防犯体制を一目で把握できるよう、組織全体の防犯対策のフロー図や、緊急対応フローを作成します。これにより、どの部署がどのタイミングでどのように動くかを明確化し、迅速な対応が可能となります。
5. 組織体制の構築
病院内の防犯責任者を明確にし、各部署やフロアごとに担当者を配置します。緊急時の対応フローやエスカレーション手順を定め、万が一の際にはスムーズに対応できる体制を構築します。
防犯責任者の明確化
各部署の担当者の配置
緊急時の指揮系統の明確化
外部機関との連携体制
6. 脆弱性の一覧化
病院の施設内外で、防犯上の脆弱性がどこにあるのかをリストアップします。例えば、夜間の駐車場の暗がりや、エントランスのセキュリティ不足など、物理的な脆弱性を洗い出し、それに対する対策を検討します。
7. 対策の策定
脅威に対してどのような対策を講じるべきか、具体的な計画を策定します。病院における防犯対策は、以下のような内容が求められます。
従業員マニュアル・管理職対応マニュアル
医療スタッフに対して、平時のマニュアルに加え、緊急時の対応や患者・訪問者とのトラブル発生時の対応手順、被害後の対応を明記したマニュアルを配布したり、わかりやすい場所に掲示します。
物理的な防犯対策
防犯カメラや入退室管理システム、薬品庫のセキュリティ強化など、物理的なセキュリティを強化します。
入館証やゲートの導入
待合室で患者かその他の侵入者化を見極めるための目立つ印(番号札など)の導入や、訪問者や業者の出入りを管理するためにの入館証やセキュリティゲートを設置し、出入りを管理します。
警備員の配置
必要に応じて警備員を配置します。単に警備会社に委託するだけではなく、全体の防犯計画を基にした警備計画を作成します。
8. コミュニケーション・フィードバック体制
防犯対策が実際に機能しているかを確認するため、定期的に防犯会議や報告会を開催し、現場の声を吸い上げる仕組みを整えます。従業員からのフィードバックを集め、問題があれば速やかに改善を行います。具体的な実施日や頻度を記載しておきます。
9. 緊急対応体制
病院内での緊急対応体制も不可欠です。従業員が緊急時にどのように対応するべきかを明確にし、万が一の際には迅速に動けるよう、緊急連絡網や避難経路の整備も行います。職員や管理職のマニュアルと重なる記載も多くなりますが、改めて全体的な対応体制についても準備しておきます。また、迅速に防御活動や避難誘導ができるように、訓練を定期的に行います。
10. BCP(事業継続計画)との連携
甚大な被害が発生した場合に備え、病院はBCP(事業継続計画)を別途策定することが推奨されます。防犯対策が被害を完全に防ぎきれなかった場合でも、迅速に病院業務を復旧させるための計画を準備しておくことが重要です。
11. 評価・改善のプロセス
防犯計画書は一度作成すれば終わりではありません。定期的に評価を行い、必要に応じて改善策を講じることで、より効果的な防犯対策を継続的に実施します。半年に一回もしくは定期的に評価プロセスを実施し、新たなリスクや脆弱性が発生した際には、柔軟に対応できる体制を整えることが大切です。
まとめ
病院における防犯計画書の作成は、患者、スタッフ、施設を守るために非常に重要です。物理的な防犯対策、緊急時の対応を含む総合的な計画を策定し、定期的なフィードバックを通じて改善を図ることで、病院全体の安全を維持することができます。
最後に、SIPでは、病院をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策、サイバーセキュリティ対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。