観光地で事業を営む企業にとって、防犯対策は欠かせません。観光地には多くの人々が集まり、文化や背景が異なる観光客が訪れるため、トラブルが発生しやすい環境となっています。企業が信頼を保ち、従業員と顧客の安全を守るためには、事前に防犯対策を講じ、トラブルの未然予防と早期対応を実現することが不可欠です。本コラムでは、そのための具体的な防犯対策について解説します。
1. 防犯方針の明確化と従業員教育
まず最初に、企業は防犯方針を明確にする必要があります。これは従業員が日常業務の中で適切な判断と行動を取るための指針となり、組織全体で統一した対応を取るために重要です。具体的な方針としては、どのようなトラブルに備えるべきか、トラブル発生時の対応手順、外部機関や警察との連携方法などを盛り込み、従業員全員に共有します。
加えて、従業員には基本的な防犯知識と対応策を教育することが必要です。特に、トラブルの発展を防ぐためには、相手の言動や行動に注意を払い、問題が発生する兆候を早期に察知するスキルや、観光客のルール違反に毅然とした対応を取れるようになるための法律知識、適切な対処法について、短時間で効率よく習得することが求められます。また、定期的な研修やシミュレーション訓練を行うことで、従業員の防犯意識を高め、迅速な対応が可能となります。
2. 犯罪を起こしにくい環境の構築
物理的な防犯対策は、犯罪を未然に防ぐための重要な手段です。観光地での事業者は、防犯カメラの設置を含む環境整備を行い、トラブル発生を抑止する必要があります。カメラの存在は、犯罪者に対して心理的な圧力を与え、抑止効果を高めます。また、店内や施設内で不審者を早期に発見するために、巡回や定期的な確認を行うことや、施設の利用者である顧客に目立つような識別カードや入場許可証を形態してもらうといった対応も有効です。
さらに、多言語対応の標識や禁止事項の掲示も有効です。観光客が文化やルールを理解できるよう、店内や外壁に「無断撮影禁止」「立ち入り禁止」「違反者は即通報」などを複数の言語で明確に表示することで、トラブルの未然防止につながります。
ルールを従業員や顧客に周知することで、ルールから逸脱した行動をとる人物に積極的に声掛けや接触をすることで、ルール違反のエスカレートを防ぐことに繋がります。
3. 顧客との円滑なコミュニケーション
トラブルを未然に防ぐためには、顧客とのコミュニケーションが大切です。特に、観光地では外国人観光客が多く、文化や習慣の違いから誤解が生じることもあります。お客様の国の文化では当たり前のことでも、国内や観光地では迷惑行為に当たることが多々あります。お客様との接触の際には、丁寧な言葉遣いや文化の違いにより避けてほしい行為などについてはわかりやすい説明を心がけ、トラブルを回避するよう努めます。日本の文化やその地域のルールを説明する際に、「この場所ではこうした行動が求められます」といった形で優しく伝えることが効果的です。観光客にとっては、その地域の文化を尊重しようとする気持ちが強い場合が多く、丁寧なコミュニケーションがトラブルを防ぐことにつながることがあります。
4. 緊急時の対応フローの整備
万が一トラブルが発生した場合に備え、事前に対応フローを整備しておくことも重要です。例えば、トラブルが発生した際には、すぐに誰に報告するのか、どのような手順で対応すべきかを従業員全員が把握している必要があります。 具体的には、暴行、暴力などの重大なトラブルに直面した場合には、さすまた等を用いた緊急避難行動をとることや、ためらわずに警察に速やかに通報することが求められます。しかし、緊急性の高くないトラブルについては、まずは現場での適切な対応を図り、必要に応じて上司に報告し、エスカレーションの判断を仰ぐことが望ましいでしょう。
また、定期的な訓練や緊急時対応のシミュレーションを行い、従業員全員が方針やマニュアルに則って、自信を持って対応できる体制を整えることも大切です。
観光客はその地域の文化を尊重しようとする気持ちを持っていることが多いですが、時には毅然とした対応を取る必要があることもあります。そうした対応はトラブルの早期解決やエスカレートを防ぐことに繋がります。
5. トラブル対応後のフィードバックと改善
トラブル対応後には、フィードバックを行い、次に活かすための改善を図ることが重要です。トラブルがどのように発生し、どのように対応したのかを記録し、従業員や顧客からのフィードバックをもとに、今後の防犯対策を見直します。これにより、トラブルの再発を防ぎ、全体の対応力を高めることができます。現場でのフィードバックを活かし、計画的な改善を行うことで、防犯対策の効果を長期的に維持できます。
まとめ
観光地で事業を営む企業にとって、防犯対策は顧客や従業員の安全を守り、トラブルを未然に防ぐために不可欠です。防犯方針の明確化や従業員教育、物理的対策、平時の対応フローや緊急時対応フローの整備、そしてフィードバックによる改善が、安全で信頼性の高い事業運営の基盤となります。観光地特有のリスクに対応するために、継続的な対策が求められますが、これを適切に実施することで、安心して観光客を迎え入れる環境を整えることができるでしょう。
最後に、SIPでは、病院や宿泊施設、店舗事業等の各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。