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適法な証拠保全のための手法と注意点

  • 執筆者の写真: secinnovpjt
    secinnovpjt
  • 2024年10月21日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年10月22日

デジタルフォレンジック調査において、証拠の保全は調査の成否を左右する最も重要なステップの一つです。証拠が適切に保全されていなければ、調査が進行しないだけでなく、証拠としての信頼性が失われ、法的に無効となるリスクもあります。この記事では、適法な証拠保全のための具体的な手法と、その際の注意点について解説します。



証拠保全の重要性とは?

証拠保全は、デジタルデバイスに保存されたデータを法的に有効な状態で取得し、調査を進めるための基本となる手続きです。特に、法廷での証拠として使用される場合、証拠の改ざんや損傷がないことを保証する必要があります。適切な手法を用いない場合、収集された証拠が無効と判断され、調査の成果が失われる可能性があるため、正確な保全が求められます。


適法な証拠保全の手法

デジタルフォレンジックにおける証拠保全には、いくつかの重要な手法があります。以下は、最も一般的かつ有効な保全手法です。


イメージング(Imaging)

イメージングは、調査対象のデバイスやメディアからデータをビット単位で完全にコピーする手法です。デバイスそのものを操作せず、データのコピーを使用して調査を進めることで、元データの改ざんや破損を防ぎます。


手順:デバイスに保存されているデータをビット単位でコピーします。データが改ざんされないよう、専用のフォレンジックツールを使用します。

効果:オリジナルデータに手を加えずに、証拠を保全できるため、法的にも信頼性が高まります。


ハッシュ値の計算

ハッシュ値の計算は、データの完全性を確認するために行われます。イメージ化されたデータのハッシュ値を計算し、元データと一致するか確認することで、データが改ざんされていないことを証明できます。


手順:イメージングされたデータのハッシュ値(デジタル指紋)を取得し、調査の途中でも定期的にハッシュ値を計算し、データの完全性を検証します。

効果:データが変更されていないことを法的に証明できるため、証拠の信頼性が保証されます。


チェーン・オブ・カストディ(Chain of Custody)

チェーン・オブ・カストディは、証拠データの取得から保管、解析、提出までの全プロセスを記録し、データが改ざんされていないことを証明するための管理手法です。これにより、データが誰の手を経て、どのように扱われたかが明確になり、証拠の信頼性を高めます。


手順:データ取得から最終的な証拠提出までのすべての操作と関係者を詳細に記録します。

効果:証拠が改ざんされていないことを証明するため、法廷での証拠能力が高まります。


ケーススタディ:証拠保全に失敗した事例

ある企業で、内部不正の調査が行われましたが、調査初期段階でデバイスのイメージングを行わず、元のデバイス上でデータの解析を進めてしまいました。後に裁判で、このデバイスが改ざんされた可能性が指摘され、収集された証拠性が不十分と判断されました。

この事例では、適法な保全手続きが取られなかったことが原因で、証拠としての価値を失ってしまった典型的なケースです。適切なイメージングやハッシュ値の計算が行われていれば、調査結果は有効な証拠として採用されていた可能性が高かったでしょう。


証拠保全における注意点

証拠保全を適法に行うためには、いくつかの重要な注意点があります。これらの注意点を怠ると、保全されたデータが無効となるリスクがあるため、慎重な対応が必要です。


デバイスの操作を最小限に抑える 証拠となるデバイスに対する操作は最小限に抑え、データの改ざんや損傷を防ぐことが重要です。デバイスの起動や再起動、ファイルの操作は証拠データに影響を与える可能性があるため、専門のフォレンジックツールを使用して慎重に進める必要があります。


保全手法の正確な記録 証拠保全の手法や操作の詳細を記録することは、後の法的手続きで非常に重要です。どの手法を使用し、どのような順序で保全作業が行われたかを明確に文書化し、証拠の信頼性を確保します。


複数のバックアップを作成 保全されたデータが万が一損傷した場合に備えて、複数のバックアップを作成しておくことが推奨されます。これにより、データの紛失や破損を防ぎ、証拠を確実に保護することができます。


ケーススタディ:成功した証拠保全の実例

ある企業で、情報漏洩の疑いが生じ、従業員が使用していたPCのデジタルフォレンジック調査が実施されました。このケースでは、適法な手続きに従って、PCのイメージングとハッシュ値の計算が行われ、さらに保全手法が詳細に記録されました。調査はスムーズに進み、最終的に法廷でも有効な証拠として採用されました。この事例は、証拠保全の適切な実施がいかに重要であるかを示しています。


証拠保全と法的サポートの連携

証拠保全は、技術的な手法だけでなく、法的な側面も考慮する必要があります。保全が法的に有効であるためには、適切なプロセスに従い、データが改ざんされていないことを証明するための手順が厳格に守られなければなりません。弁護士や法務部門との連携を通じて、証拠保全が法的要件を満たすように進めることが重要です。


まとめ

デジタルフォレンジック調査において、適法な証拠保全は調査の信頼性と成功を保証するための鍵です。イメージング、ハッシュ値の計算、チェーン・オブ・カストディなど、適切な手法を用いてデータを保全し、改ざんや損傷を防ぐことが必要です。また、法的な手続きや記録を怠らないようにし、適法かつ信頼性の高い証拠を提供できるよう準備しましょう。


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