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防犯対策において経験則に頼ることの問題点とフレームワーク導入の重要性

日本における防犯対策や防犯コンサルティングでは、経験則や感覚に頼った対応が一般的となるケースが多く見受けられます。これは現場での経験を重視するあまり、体系的なフレームワークの導入が遅れていることが原因の一つと考えられます。しかし、こうした経験則に頼るアプローチにはいくつかの問題点があり、より科学的かつ体系的なフレームワークを導入することが、効果的な防犯対策の実現には欠かせません。本コラムでは、日本における防犯対策が経験則に頼ることの問題点と、フレームワーク導入の重要性について解説します。



1. 経験則に頼ることの問題点

防犯対策を経験則や感覚値に頼る場合、次のような問題点が生じます。


  • 一貫性と再現性の欠如

    経験則に基づく対策は担当者のスキルや知識に依存するため、対策内容に一貫性がなくなりやすいです。また、担当者が変わると対策の質も変わってしまい、再現性が低くなります。

  • 本質的な問題の見落とし

    経験則だけでは、根本的な問題に気付くことが難しくなる場合があります。例えば、ある事象が偶然だと判断されてしまい、実際には組織全体の構造的な問題や環境要因によって引き起こされている場合でも、対応が表面的になってしまうリスクがあります。

  • 科学的根拠の不足

    経験に基づく対策は、科学的な根拠に裏付けられていないため、その効果を客観的に評価することが困難です。結果として、同じトラブルが繰り返されてしまったり、新たな犯罪手法への対応が難しくなったりするケースが生じます。


2. フレームワーク導入の必要性

これらの問題点を解決するためには、防犯対策において体系的なフレームワークを導入することが重要です。フレームワークに則って対策を実施することで、本質的な問題やリスク要因を見逃すことなく、効果的な防犯対策を講じることができます。


  • 本質的な問題への気付き

    フレームワークを用いることで、防犯対策の計画や実施において組織全体のリスクや脅威を体系的に洗い出し、本質的な問題に気付くことが可能になります。これは、経験則に頼るだけでは見落としてしまうような隠れたリスクを特定する上で非常に有効です。

  • 科学的な根拠に基づく対策

    適切なフレームワークは犯罪機会論や環境犯罪学など、犯罪防止に関する理論や研究成果を取り入れたものです。そのため、フレームワークに基づいて対策を実施することで、科学的根拠に基づいた防犯対策を行うことができます。


3. 具体的なフレームワーク導入の方法

フレームワーク導入の際に活用する理論として、特に有効なものとして私たちは「防犯ピラミッド理論」と「フィルター理論」を提案しています。

  • 防犯ピラミッド理論の活用

    防犯ピラミッド理論は、防犯対策を基礎層・中間層・最上層の3つに階層化し、それぞれ異なる役割を持つ対策を組み合わせることを提案しています。基礎層では防犯意識の向上や戦略の策定およびその訓練、中間層では衝動的なトラブルに対する物理的な対応力の準備、最上層では主に心理的な効果を活用した犯罪の抑止といった階層ごとの対策を講じることで、効果的な防犯を実現します。

  • フィルター理論の活用

    フィルター理論では、防犯対策を段階的に進めるためのフィルターを設け、犯罪やトラブルの発生を未然に防ぐアプローチを提案しています。例えば、最初にコミュニケーションを活用したフィルターを設け、次に法律に基づく判断、そして最終的に安全確保のための行動を取るといった流れで対策を進めることにより、リスクを段階的に排除することが可能となります。


フレームワーク導入の実践例

  • 現状分析

    まず、自社や施設の防犯対策の現状を分析します。どのような犯罪やトラブルが発生し得るか、既存の対策がどの程度有効であるかを確認し、問題点を洗い出します。

  • 目的と目標の設定

    防犯ピラミッド理論やフィルター理論に基づき、防犯対策の目的と目標を設定します。例えば、「顧客や従業員の安全確保を最優先としつつ、軽犯罪の抑止とトラブルの早期解決を図る」といった具体的な目標を設定することで、対策の方向性が明確になります。

  • 全体像の対策の策定

    防犯ピラミッド理論に従い、基礎層・中間層・最上層ごとに対策を策定します。例えば、基礎層では防犯戦略の策定やマニュアルの整備、中間層では戦略や計画に従った

    巡回や警備員、ワークフローの導入、最上層では戦略や計画に基づいた場所への防犯カメラや防犯システムの設置などの対応策を講じ、最終的にそれらがどのように連携するのかも明確化することで、全体的な対策として完成させます。

  • 現場対応のマニュアル・フロー

    現場に応じて現場対応のマニュアルやフローを整備します。まず、コミュニケーション、法律、安全性の基準に基づき、顧客対応児や緊急時のフロー、通報手順を簡潔にまとめ、従業員が即座に行動できる体制を整えます。

  • 継続的なフィードバックと改善

    対策の実施結果を定期的に評価し、必要に応じて改善を行います。現場での対策が機能しているか、マニュアルやフローが想定していない問題が発生していないかを確認し、改善策を講じることで、対策の効果を高めることができます。


まとめ

日本の防犯対策が経験則に頼ることの問題点を克服するためには、体系的なフレームワークを導入し、科学的根拠に基づいた対策を実施することが不可欠です。特に、防犯ピラミッド理論やフィルター理論を活用することで、防犯対策を段階的かつ包括的に行うことが可能となります。このようなフレームワークを導入することで、表面的な対策に終始せず、本質的な問題に気付くことができるだけでなく、効果的で持続可能な防犯対策を実現することができるでしょう。企業や組織が包括的かつ体系的なフレームワークを活用することで、より安全な社会の実現に貢献していくことが期待されます。


最後に、SIPでは、病院をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。

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