デジタルフォレンジックは、現代のサイバーセキュリティや不正調査において欠かせない技術です。デジタルデバイスに保存されたデータを調査し、法的な証拠を収集・解析するための手法として、情報漏洩やハッキング、不正行為に対処する際に活用されます。本記事では、デジタルフォレンジックの技術的な基礎と、調査の主なプロセスについて解説します。

デジタルフォレンジックとは?
デジタルフォレンジック(Digital Forensics)は、コンピュータやスマートフォン、ネットワークシステムなどに保存されたデジタルデータを解析し、法的に有効な証拠を収集するための技術的手法です。この技術は、情報漏洩、不正行為、ハッキング事件などの調査に幅広く活用されており、現代の企業にとって欠かせない存在です。
デジタルフォレンジックの主なプロセス
デジタルフォレンジックの調査は、以下の主要な4つのステップで進行します。それぞれのプロセスが厳密に行われることで、調査の正確性と信頼性が確保されます。
1. 保全(Acquisition)
保全は、デジタルデータを改ざんや損傷から守りながら証拠として保管する最も重要なステップです。調査対象のデバイスやメディアからデータを取得し、そのデータが調査中に変更されないようにすることが求められます。
イメージング:デバイスのデータをビット単位でコピー(イメージ)し、元データの改ざんや破損を防ぎます。このコピーが調査対象となり、元のデータには手を加えないようにします。
ハッシュ値の計算:データが改ざんされていないことを確認するために、ハッシュ関数を使ってハッシュ値を計算します。イメージ化したデータと元のデータのハッシュ値が一致することで、データの完全性が証明されます。
チェーン・オブ・カストディ(Chain of Custody):データの保全や解析に関わる全てのプロセスと関係者を記録する「チェーン・オブ・カストディ」を確立し、証拠が改ざんされていないことを保証します。
2. 復元(Data Recovery)
次に、復元のプロセスで、削除されたり破損したデータを回復します。現代のOSやセキュリティ技術が進化したため、データ復元は難易度が高くなっていますが、専門的なツールを使えば多くの場合、重要なデータを復元できます。
削除フラグの変更:データが削除された場合でも、ファイルシステムは物理的にデータを削除するのではなく、削除フラグを立てるだけです。これにより、データの復元が可能なケースが多々あります。
メタデータのカービング:ファイルのメタデータ(作成日時、サイズ、形式など)を使って、削除されたファイルを復元する手法です。完全に復元できない場合でも、メタデータを基にデバイスの使用履歴を推測することが可能です。
データカービング:ファイルシステムの情報を利用せず、データ自体のパターンを検出して復元する手法です。データが破損していたり、ファイルシステムが失われていても、特定のパターンを検出することでファイルを復元します。
3. 解析(Examination・Data Analysis)
解析は、デバイスに残されたデータやログを詳細に調査するプロセスです。これにより、調査対象者がどのような操作を行ったか、外部からの攻撃があったかなど、事件の解明につながる情報を得ます。
システムログの解析:デバイスに保存されたシステムログを解析し、どのユーザーが、いつ、どのデバイスで、どの操作を行ったかを特定します。例えば、不正アクセスや権限の乱用などの証拠が見つかることがあります。
USB接続履歴の調査:USBデバイスの接続履歴を確認し、外部メディアを使って情報が持ち出された可能性があるかどうかを調査します。
ネットワーク接続履歴の確認:社内ネットワークや外部サーバーとの通信履歴を調査し、不正な通信やハッキングの痕跡を特定します。
4. 報告(Reporting)
報告のステップでは、調査結果をまとめ、調査対象者や依頼主に対してわかりやすく説明します。この段階で、調査の目的や使用した技術、結果に基づいた証拠の評価を行います。
調査結果の報告:調査の経緯、使用した技術、得られた証拠を詳細に報告します。報告書は、調査依頼者や法廷で使用するため、客観的かつ正確に作成されます。
証拠の評価:見つかった証拠が、法的に有効であり、信頼性があるかを評価します。チェーン・オブ・カストディが適切に管理されているか、データの完全性が保たれているかを確認します。
ケーススタディ:企業内でのハッキング事件
ある企業で、社内ネットワークが不正アクセスを受け、重要なデータが持ち出された可能性があるとされました。この事件では、社内のサーバーと従業員のPCに保存されていたログファイルの解析を行い、外部の不正アクセスによる通信が確認されました。
保全の段階でサーバーから全データのイメージを取得し、復元では一部削除されていた通信ログを回復。解析により、不正アクセスの経路や使用された不正プラブラムやマルウェアなどを特定しました。この調査結果は最終的に報告としてまとめられ、法廷でも有効な証拠として提出されました。
デジタルフォレンジック技術の重要性
デジタルフォレンジックは、企業が直面するサイバー攻撃や内部不正の解明において、不可欠な役割を果たしています。保全、復元、解析、報告の各プロセスが正確に行われることで、デジタル証拠の信頼性が確保され、法的手続きにおいても有効な証拠として活用されます。
まとめ
デジタルフォレンジックのプロセスは、法的証拠としてのデータ収集や解析を行うための技術的な手法です。正確な保全、復元、解析、報告を行うことで、企業が直面する情報漏洩や不正行為、ハッキング事件に効果的に対応することが可能です。
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