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デジタルフォレンジック法務編 専門用語集

デジタルフォレンジックでは、証拠としてのデジタルデータを扱うため、法的な手続きやルールに従って証拠を収集・保全することが重要です。ここでは、デジタルフォレンジックに関連する法務的な用語をわかりやすく紹介します。



1. 証拠保全(Evidence Preservation)

証拠保全とは、証拠となるデジタルデータが裁判や調査で使用できるよう、改ざんや破損を防ぐために適切に保存することです。証拠が不正に変更されていないことを保証するために、コピーや保管手続きが厳密に管理されます。


2. チェーン・オブ・カストディ(Chain of Custody)

チェーン・オブ・カストディとは、証拠となるデータがいつ、誰の手によって収集・保管・移送されたかを詳細に記録する手続きです。この手続きを正しく行うことで、証拠が不正に操作されていないことを証明し、法廷で証拠として認められる可能性が高くなります。


3. デジタル証拠(Digital Evidence)

デジタル証拠とは、コンピュータやスマートフォンなどのデジタル機器から得られる証拠のことです。メール、文書、写真、動画、通信履歴などが含まれます。これらの証拠は、裁判や法的手続きで使用される場合があります。


4. 法的有効性(Legal Admissibility)

法的有効性とは、デジタル証拠が裁判で正式な証拠として受け入れられるかどうかを指します。証拠が有効であるためには、適切な方法で収集・保全され、改ざんや不正がないことが求められます。適切に処理されなかった証拠は裁判で無効とされる可能性があります。


5. 個人情報保護法(Personal Information Protection Law)

個人情報保護法は、個人のプライバシーを守るための法律です。デジタルフォレンジック調査では、個人情報を取り扱う場合、この法律を遵守する必要があります。違反すると罰則が科されることがあります。


6. 証拠開示(Discovery)

証拠開示とは、裁判や訴訟の際に、相手側に対して証拠を提供することを指します。デジタルフォレンジックでは、収集したデータを裁判で使う前に、法的に証拠として提出するための準備が必要です。この手続きが適切でないと、証拠が無効になる可能性があります。


7. 電子証拠開示(e-Discovery)

電子証拠開示とは、電子メールやデジタル文書などのデジタル証拠を裁判や調査で開示するプロセスです。アメリカの裁判でよく行われる手続きで、日本でも企業の訴訟において重要視されています。大量のデジタルデータを効率的に管理し、必要な証拠を見つけ出すために使われます。


8. 適法収集(Lawful Collection)

適法収集とは、デジタル証拠が法律に従って正当に収集されていることを意味します。証拠が違法な方法で収集された場合、裁判所でその証拠が無効となる可能性があります。デジタルフォレンジックでは、法的な許可や手続きをしっかりと守ることが必要です。


9. プライバシー権(Right to Privacy)

プライバシー権は、個人が自分の個人情報や私生活を守る権利です。デジタルフォレンジック調査では、このプライバシー権を侵害しないように、データを収集する際のルールをしっかり守ることが求められます。


10. GDPR(一般データ保護規則:General Data Protection Regulation)

GDPRは、ヨーロッパで施行されている個人データ保護に関する法律です。ヨーロッパの市民のデータを扱う際には、この規則を守らなければなりません。違反した場合、企業に対して高額な罰金が科されることがあります。


11. デジタル署名(Digital Signature)

デジタル署名は、デジタルデータが改ざんされていないことや、正しい送り主から送信されたことを証明するための技術です。電子メールや電子文書のやり取りが正しいことを証明し、法的な証拠としての有効性を高めます。


12. 合法監視(Lawful Surveillance)

合法監視とは、法律に基づいて、特定の人物やネットワークを監視する行為です。犯罪捜査や企業の不正行為調査で使われることがありますが、プライバシー保護を守るため、正当な理由がない限り許可されません。


13. 法廷証拠(Court Admissible Evidence)

法廷証拠とは、裁判で正式に証拠として認められるデジタルデータや情報のことです。法廷で使うためには、証拠が適切に収集・保管されている必要があります。収集過程が不適切だと、証拠として認められないことがあります。


14. 示談書(Settlement Agreement)

示談書は、紛争を裁判に持ち込まずに解決するために、当事者同士が合意した内容を文書にしたものです。デジタルフォレンジック調査の結果、問題が解決される場合、この示談書を作成し、合意を法的に記録します。


15. 法的責任(Legal Liability)

法的責任とは、デジタルフォレンジックの調査結果に基づき、違法行為を行った人物や企業が責任を負うことを指します。調査の結果、違法な行為が明らかになれば、刑事罰や民事責任が問われることになります。


16. 不正行為(Fraudulent Activity)

不正行為とは、法律や規則に違反する行為のことです。デジタルフォレンジックでは、詐欺やデータの盗難、不正アクセスなどの証拠を探し出し、それを法的に追及するために調査が行われます。


17. 電子証拠(Electronic Evidence)

電子証拠は、コンピュータやデジタル機器から得られる証拠で、メール、テキストメッセージ、デジタル契約書などが含まれます。これらの証拠は、犯罪や不正行為の追及に使われるため、裁判でも重要な役割を果たします。


18. 民事訴訟(Civil Litigation)

民事訴訟は、個人や企業が法律上の問題を解決するために裁判を通じて争う手続きです。デジタルフォレンジック調査では、詐欺や不正競争などの証拠が集められ、訴訟で使用されることがあります。


19. 刑事訴訟(Criminal Litigation)

刑事訴訟は、犯罪が行われた場合に、その責任者を法的に追及するための裁判手続きです。デジタルフォレンジックで得られた証拠が、犯行の証拠として刑事訴訟で使用されることがあります。


20. 示談(Settlement)

示談とは、裁判に持ち込まずに、当事者同士で問題を解決することです。デジタルフォレンジック調査の結果に基づき、示談によって解決するケースもあります。この場合、双方が合意した内容を文書にまとめることが一般的です。


21. 証拠能力(Evidentiary Capability)

証拠能力とは、裁判で提出された証拠が、法的にどの程度信頼性を持って認められるかを意味します。デジタルフォレンジックで得られたデータも、証拠能力が認められるためには、収集方法が正当であり、改ざんされていないことが必要です。


22. 証拠開示命令(Discovery Order)

裁判所が当事者に対して、訴訟に関連する証拠を相手方に提供するよう命じるものです。デジタルフォレンジック調査で得られたデジタル証拠も、こうした証拠開示命令に基づいて提出されることがあります。


23. 証拠排除法則(Exclusionary Rule)

証拠排除法則とは、違法に取得された証拠は裁判で使用できないという法律です。たとえば、デジタルフォレンジック調査で不正な方法で取得された証拠は、証拠排除法則によって裁判で使えなくなることがあります。


24. デジタルコンプライアンス(Digital Compliance)

デジタルコンプライアンスとは、企業や個人がデジタルデータを取り扱う際に、法令や規則を守ることです。例えば、個人情報保護法やGDPRに従って、データの収集や管理を行うことが求められます。


25. 違法収集証拠(Illegally Obtained Evidence)

違法収集証拠とは、法律に違反して取得された証拠のことです。デジタルフォレンジックの調査においても、法的な許可なく取得されたデータは違法収集証拠となり、裁判で使えない可能性があります。


26. フォレンジック対応(Forensic Readiness)

フォレンジック対応とは、企業がいつでも法的に有効なデジタル証拠を収集できるよう、事前に準備を整えておくことです。これにより、サイバー攻撃や不正行為が発生した際に、迅速に証拠を収集して法的手続きに備えることができます。


27. インシデントレスポンス(Incident Response)

インシデントレスポンスは、サイバー攻撃やシステム障害などのインシデントが発生したときに、迅速に対応し、問題を解決するためのプロセスです。デジタルフォレンジックは、インシデントレスポンスの一環として、証拠収集や原因究明に役立ちます。


28. プライバシーインパクトアセスメント(Privacy Impact Assessment, PIA)

プライバシーインパクトアセスメントは、新しいシステムやプロジェクトが、個人情報にどのような影響を与えるかを事前に評価するプロセスです。デジタルフォレンジックでデータを扱う際にも、プライバシーへの影響を評価し、適切な対応が必要です。


29. マルウェア証拠(Malware Evidence)

マルウェア証拠とは、ウイルスやスパイウェアなどの悪意あるソフトウェア(マルウェア)に関連する証拠のことです。デジタルフォレンジックでは、マルウェアの痕跡やその活動ログを調べることで、不正行為やサイバー攻撃の証拠を見つけ出します。


30. デジタル監査証跡(Digital Audit Trail)

デジタル監査証跡とは、デジタルデバイスやシステム上でのすべての行動履歴を記録したものです。これにより、誰がいつどのような操作を行ったのかを確認でき、不正行為の発見や証拠保全に役立ちます。


31. 不正アクセス防止法(Unauthorized Computer Access Law)

不正アクセス防止法は、他人のコンピュータやネットワークに無断でアクセスすることを禁止する法律です。デジタルフォレンジックの調査では、この法律に違反する行為を発見し、証拠として記録することが重要になります。


32. データ漏洩(Data Breach)

データ漏洩とは、企業や組織が保有する個人情報や機密データが外部に流出してしまうことです。デジタルフォレンジック調査では、どのようにデータが漏洩したかを特定し、その原因を追求します。


33. 電子署名法(Electronic Signatures Law)

電子署名法は、電子データに対する署名が法的に認められるための基準や要件を定めた法律です。デジタルフォレンジックでは、電子署名が正当かどうかを確認し、契約や取引が正当なものであるかを確認します。


34. ネットワークモニタリング(Network Monitoring)

ネットワークモニタリングとは、企業や組織のネットワーク内でのデータ通信やアクセス状況を監視することです。不正アクセスやサイバー攻撃の兆候を早期に発見し、法的対応の準備を整えるために使用されます。


35. デジタル偽造(Digital Forgery)

デジタル偽造とは、デジタルデータや電子文書を改ざんして、他人を騙す行為のことです。デジタルフォレンジックでは、こうした改ざん行為を発見し、証拠として特定します。


36. 情報セキュリティ管理体制(Information Security Management System, ISMS)

ISMSは、企業や組織が情報セキュリティを適切に管理し、守るための仕組みです。デジタルフォレンジックの観点からは、情報の漏洩や改ざんを防ぐ体制が整っているかを確認し、必要な場合には改善を提案します。


37. フォレンジック対応規程(Forensic Policy)

フォレンジック対応規程とは、企業や組織がデジタルフォレンジック調査を行う際のルールや手順をまとめた内部規則です。これにより、法的に適切な証拠収集や調査が行われることを保証します。


38. 訴訟保全義務(Legal Hold Obligation)

訴訟保全義務とは、訴訟が予想される状況において、証拠となるデジタルデータを削除や変更から保護し、保全する義務です。デジタルフォレンジックでは、この義務を守るためにデータの保全処理が行われます。


39. 不正競争防止法(Unfair Competition Prevention Law)

不正競争防止法は、他社のアイデアや機密情報を不正に利用したり、顧客をだましたりする行為を禁止する法律です。デジタルフォレンジック調査では、こうした不正行為が行われた証拠を集め、訴訟で使用されます。


40. サイバー攻撃(Cyber Attack)

サイバー攻撃とは、ハッキングやウイルスなどを使って、コンピュータやネットワークを攻撃し、データを盗んだり、システムを破壊したりする行為です。デジタルフォレンジックでは、サイバー攻撃の痕跡を解析し、攻撃者を特定するための証拠を収集します。


まとめ

デジタルフォレンジックに関連する法務的な用語は、調査や裁判における証拠の扱いに大きく関わるものです。ここで紹介した用語を理解することで、デジタル証拠の法的な扱いや調査の手順についての知識を深めることになると幸いです。

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