防犯対策において、不審者を見極めることは非常に重要です。しかし、個人のスキルだけに頼るのではなく、組織全体で対応できるワークフローや環境構築を取り入れることが、より効果的な防犯対策となります。本コラムでは、まず一般的に言われる不審者の見極め方を紹介しつつ、その限界を踏まえ、ワークフローや環境構築の重要性について考えてみたいと思います。
1. 一般的に言われる不審者の見極め方
まず、不審者を見極める際に、以下のようなポイントが一般的に挙げられます。
周囲を頻繁に見回す:不審者は、他人に見られているかを気にして、周囲をキョロキョロと確認することが多いとされています。
動きが不自然:動きがぎこちない、急に立ち止まったり方向を変えたりするなど、一般の人とは異なる動作をすることがあります。
手やポケットに何かを隠すような仕草:何かを持っている、もしくは隠している場合には、その部分を隠すような動きをすることがあります。
職員や他の人と目を合わせない:不審者は、人と目を合わせることを避ける傾向があります。
同じ場所を何度も往復する:特定の場所を行ったり来たりする場合、不審な行動と見なされることがあります。
これらのポイントは、不審者を見極めるための参考としてよく挙げられますが、実際にはこれらの特徴だけで判断することは専門家等であっても非常に難しいです。
2. 不審者見極めの難しさと課題
不審者の特徴や行動パターンは一様ではなく、状況によっても変わります。そのため、個人の判断だけで正確に見極めるのは非常にハードルが高く、次のような問題があります。
経験やスキルのばらつき:従業員の経験やスキルによって、不審者の見極め方に差が出るため、見逃しや誤判断が発生する可能性が高くなります。
先入観の影響:見た目や雰囲気だけで不審者を判断することは誤解を招くリスクがあります。犯罪者に見えない人が実際に不審者であるケースも多いため、判断が難しいです。
心理的なハードル:いざ不審者に声をかけるとなると、相手を疑うことへの不安やトラブルになることへの恐れから、実際の対応が難しくなります。
これらの課題を踏まえると、個人のスキルだけに頼らず、組織全体で対応できる仕組みが必要不可欠です。
3. ワークフローと環境構築で不審者を見極める
個人の技術や経験に頼らず、組織全体で不審者を見極めるためのワークフローや環境構築は非常に効果的です。以下のポイントを取り入れることで、不審者の見極めが格段に容易になります。
視覚的識別アイテムの導入:入館証やバッジ、リストバンドなどを利用し、従業員や訪問者を明確に識別することで、ルールに沿わない行動をする人物を見つけやすくなります。これにより、入館証を持たない人への声掛けが簡単になり、不審者を見極めるハードルが下がります。
チェックポイントの設定:建物内に複数のチェックポイントを設け、特定の行動を取る際に従業員や訪問者が必ず通過するようにします。これにより、正規の手続きを経ていない人物を特定しやすくなり、不審な行動が目立つようになります。
動線のコントロール:施設内の移動ルートを明確に設定し、利用者に従うべき動線を示すことで、異常な動きをする人物を見極めやすくなります。例えば、訪問者が決められた動線から逸脱した場合、自然な流れで声掛けをすることが可能になります。
環境デザインの工夫:照明の調整や見通しの良いレイアウト、警告サインの掲示など、環境そのものを整備することで、不審な行動が目立つ状況を作り出します。これにより、不審者の行動を抑制する効果も期待できます。
4. 事例:不審者見極めのワークフロー
一例として、病院の場合、待合室に訪れた患者に大きな番号札を渡すことで、全ての来院者が番号札を所持しているか確認できます。番号札を持っていない人に声をかけることは、単に「番号札は受け取られましたか?」といった自然な行為に変わり、不審者に対しても自然な流れで接することができます。このように、システムやルールを整備することで、不審者を見極める声掛けの心理的ハードルを下げることができます。
5. テクノロジーの活用による不審者の見極め
最新のAI技術を活用した監視カメラシステムでは、異常な動きや長時間滞在する人物を自動的に検出することが可能です。このようなシステムを取り入れることで、不審な行動をリアルタイムで把握し、対応することができます。また、入退室管理システムと連携することで、不正な入室を防ぎ、不審者の特定に役立ちます。
まとめ
不審者を見極める際、個人の技術だけでは限界があるのが現実です。そのため、ワークフローや環境構築を活用し、不審者の行動を見極めやすくする仕組みを整えることが不可欠です。視覚的な識別アイテムや動線のコントロール、環境デザインの工夫、さらにはテクノロジーの活用などを取り入れることで、個人のスキルに頼らず、組織全体で不審者を見極める力を高めることができます。
これにより、不審者に対する対応の精度が向上し、より安全で安心な環境を作り出すことができるでしょう。犯罪の機会を減らし、不審者が行動しづらい環境を整えることが、最も効果的な防犯対策の一つと言えます。
最後に、SIPでは、病院をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。
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