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保全の重要性と具体的な方法(イメージング・ハッシュ値)

デジタルフォレンジック調査において、保全は調査の成功を左右する重要なステップです。証拠となるデジタルデータが適切に保全されていない場合、証拠が改ざんされたり損傷したりするリスクが高まり、法的に有効な証拠として認められない可能性があります。本記事では、保全の重要性と、具体的な手法であるイメージングとハッシュ値の計算について詳しく解説します。



保全の重要性とは?

デジタルフォレンジックにおける保全は、調査対象となるデジタルデバイスやデータが法的に有効な状態で保持され、証拠としての信頼性を損なわないようにするためのプロセスです。適切な保全が行われないと、次のようなリスクが生じます。


データの改ざん:デバイスの操作やデータの不適切な取得により、証拠が変更されてしまう可能性があります。

証拠能力の喪失:法的に有効な手続きが行われなかった場合、法廷で証拠として認められない可能性があります。

信頼性の欠如:データが正しく保全されていないと、証拠の信頼性が低下し、調査の結論が疑問視されることがあります。


イメージングとは?

イメージングは、調査対象のデバイスやメディアからデータをビット単位で完全にコピーする手法です。これにより、元データを変更することなく、コピーされたデータを用いて調査が進められます。オリジナルのデバイスやデータに手を加えず、コピーである「イメージ」を使用することで、データの改ざんや破損のリスクを最小限に抑えることができます。


イメージングの具体的な手順

デバイスの選定

 PC、スマートフォン、外付けハードディスクなど、調査対象となるデバイスを選定します。

ビット単位でのコピー

 デバイスの全データをビット単位でコピー(イメージ)します。これにより、データ構造をそのまま保持し、元データに変更を加えずに調査が可能です。

ハードウェア・ソフトウェアの使用

 専用のハードウェアやソフトウェアを使用してデータをコピーし、コピー過程でデータが改ざんされないようにします。


イメージングのメリット

元データの保護:調査中にデバイスに変更を加えるリスクを防ぎ、データが正確に保全されます。

調査の信頼性向上:法廷での証拠能力が認められやすく、データの改ざんが疑われるリスクを低減します。


ハッシュ値とは?

ハッシュ値は、データの完全性を確認するために使用される「デジタル指紋」のようなものです。ハッシュ関数を用いてデータから生成される一定長の値であり、データが一切改ざんされていないことを確認するために利用されます。もしデータが少しでも変更されれば、ハッシュ値も異なる結果を示します。


ハッシュ値の具体的な手順

イメージング後のハッシュ計算

 イメージングされたデータのハッシュ値を計算し、元データと同じ値であることを確認します。

ハッシュ値の記録

 調査が進行する間も、定期的にハッシュ値を計算し、データの完全性が保たれていることを確認します。これにより、データが調査中に改ざんされていないことを証明できます。

検証

 調査終了後、元データとイメージされたデータのハッシュ値を再度比較し、一致していることを確認します。


ハッシュ値のメリット

改ざんの検知:データが一切変更されていないことを数値で証明できるため、改ざんがないことを法的に証明できます。

信頼性の確保:調査過程でのデータの信頼性を高め、裁判で証拠として使用できる可能性を高めます。


ケーススタディ:ハッシュ値を用いた成功事例

ある企業で、内部の従業員による情報漏洩が疑われ、デジタルフォレンジック調査が行われました。調査チームは、まず従業員のPCとスマートフォンからイメージングを行い、すぐにハッシュ値を計算しました。調査後もハッシュ値を再度計算し、データに改ざんがなかったことを確認できたため、裁判でも証拠として採用されました。

この事例は、イメージングとハッシュ値の適切な使用が、デジタルデータの信頼性を高め、法的な有効性を確保することに繋がる典型的な例です。


イメージングとハッシュ値を組み合わせた保全の重要性

イメージングとハッシュ値の組み合わせは、デジタルフォレンジック調査における証拠保全において最も信頼性が高い手法です。イメージングによってデータをそのままコピーし、ハッシュ値でその完全性を保証することで、証拠の信頼性を確保します。この2つの手法を適切に使用することが、調査全体の成功と法的な証拠能力を確保する鍵となります。


保全手法の注意点

イメージングやハッシュ値を用いた保全手法には、いくつかの注意点があります。これらを守らないと、証拠が無効になるリスクがあるため、慎重に対応することが重要です。


適切なツールの使用

保全の際に使用するハードウェアやソフトウェアは、専門のフォレンジックツールを使用することが必要です。一般的なツールでは、データの完全性が保証されない場合があります。


チェーン・オブ・カストディの記録

保全プロセス中に誰がどのようにデータを扱ったか、詳細に記録する「チェーン・オブ・カストディ」が重要です。この記録がない場合、法的に証拠能力が否定される可能性があります。


デバイスの操作を最小限に抑える

デバイスに対して不必要な操作を行うと、データが変更されるリスクがあります。デバイスの取り扱いには細心の注意を払い、イメージング以外の操作を最小限に抑える必要があります。


まとめ

デジタルフォレンジックにおける証拠保全は、調査の信頼性を高め、法的に有効な証拠を提供するための最も重要なステップです。イメージングとハッシュ値の計算を組み合わせることで、データの完全性を保証し、調査対象データの改ざんリスクを最小限に抑えることができます。また、適切なツールの使用やチェーン・オブ・カストディの記録も忘れずに行うことで、調査が円滑に進み、法廷での証拠能力が確保されます。

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