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情報漏洩対策における個人デバイス管理の技術と法的リスクマネジメント

個人所有デバイス(スマートフォンやノートパソコンなど)が企業業務で使われることが増える一方で、情報漏洩のリスクも高まっています。**BYOD(Bring Your Own Device)**と呼ばれるこの慣習は便利ですが、セキュリティ上の脆弱性が生まれ、適切な管理と法的な対策が不可欠です。

この記事では、個人デバイスを管理するための技術的な対策と、法的なリスクマネジメントについて詳しく解説します。



1. 個人デバイス管理の技術的対策

1.1 デバイス管理ソリューション(MDM: Mobile Device Management)

MDMは、企業が従業員の個人デバイスを遠隔で管理するためのソリューションです。これにより、企業データやアプリケーションをセキュアに保つことが可能になります。MDMには次のような機能が含まれます。


  • デバイスのリモートロック:紛失や盗難にあった場合、管理者が遠隔からデバイスをロックし、データを保護します。

  • データのリモート削除:企業データが危険にさらされた場合、デバイスに保存されたデータを消去できます。

  • セキュリティポリシーの適用:企業のセキュリティルールに従い、デバイス上のパスワード管理やデータ暗号化を強制できます。


1.2 暗号化技術の活用

デバイス内に保存されるデータを暗号化することは、データ漏洩を防ぐために重要です。万が一、デバイスが盗難されたとしても、暗号化によってデータを第三者が閲覧することを防ぎます。


  • ファイル暗号化:個別のファイルやフォルダ単位で暗号化を施し、データへの不正アクセスを防止します。

  • ディスク全体の暗号化:デバイス全体を暗号化し、パスワードがない限り、データを読み取れなくします。


1.3 VPN(Virtual Private Network)の使用

個人デバイスが外部ネットワークから企業システムにアクセスする際、VPNを利用することで、通信が暗号化され、安全に社内システムに接続できます。適切に運用すると、公共Wi-Fiなどの不安定なネットワークを経由しても、データが外部に漏洩するリスクを減らしますが、VPN自体の脆弱性が問題になった事例もあるため、注意して運用する必要があります。


1.4 アクセス制御と監視

企業のシステムにアクセスする個人デバイスに対し、厳格なアクセス制御を設けることが不可欠です。具体的には、以下の技術を組み合わせることで、アクセスの安全性を高めます。

  • 二要素認証(2FA):ユーザー名とパスワードに加え、スマートフォンのコードや生体認証を使用することで、認証の強度を向上させます。

  • アクセスログの監視:個人デバイスが企業システムにアクセスした際の記録を残し、不審なアクセスを即座に検出・対応します。


2. 個人デバイス管理における法的リスクマネジメント

2.1 プライバシー保護と法的義務

個人デバイスに関しては、プライバシーの保護データ保護法規制の順守が必要です。企業が従業員のデバイスを監視・管理する際、従業員の個人情報やプライベートなデータに触れる可能性があるため、法的に適切な対応を取らなければなりません。


2.2 デバイス提供義務の明確化

従業員が業務中に不正行為を行った疑いがある場合、企業はその従業員の個人デバイスを調査する必要があることがあります。しかし、法律的に個人所有のデバイスを強制的に調査する権利は限られています。そのため、雇用契約書や就業規則において、業務に使用される個人デバイスについて、調査やデータ提供の義務を明確に定めておくことが重要です。


2.3 合意書とポリシー策定

個人デバイスの利用に関するリスクを管理するため、BYODポリシー合意書を事前に従業員に提示し、同意を得ることが重要です。これにより、デバイスの管理に関する企業の権限や、データ監視の範囲が明確化され、従業員の権利侵害を防ぐことができます。


  • BYODポリシーの内容

    • 企業のセキュリティ基準を遵守する義務

    • 企業データと個人データの分離方法

    • デバイス管理ソリューションの導入の同意

    • 監視やデバイス調査に関する同意条項


2.4 違法収集のリスク

企業が従業員のデバイスを調査する際、違法にデータを収集したと見なされるリスクがあります。適法な手続きに従わずにデータを収集すると、デジタル証拠として法廷で無効となることがあるため、法的に許可された方法で証拠を収集することが求められます。

  • 適法な収集のための手続き

    • 従業員の同意を得る

    • データの範囲や収集目的を明確にする

    • 個人データを最小限に抑える


3. ケーススタディ:個人デバイス管理の成功事例

ある大手企業で、従業員がBYODを活用して社内データにアクセスしていたが、特定の従業員によるデータ漏洩が発覚しました。この企業は、事前にMDMソリューションを導入し、BYODポリシーでデバイスの監視とデータ消去の権限を得ていたため、迅速に該当デバイスからデータを削除し、被害を最小限に抑えることができました。さらに、ポリシーに基づいて法的な対応もスムーズに行い、従業員に対する適切な処分が下されました。


まとめ

個人デバイス管理は、情報漏洩のリスクを抑えるために重要な要素です。MDMや暗号化、VPNなどの技術を活用し、厳格な管理を行うと同時に、プライバシー保護や法的手続きをしっかりと行うことが必要です。BYODポリシーの策定や、従業員との合意書を通じて、法的リスクを管理することが企業の安全を守る鍵となります。

企業のセキュリティ対策として、技術的な管理と法的リスクマネジメントを両立させることが、効果的な情報漏洩防止策に繋がるでしょう。


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