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調査対象物の取得方法と法的課題

デジタルフォレンジック調査において、調査対象物の取得は非常に重要なステップです。デジタルデバイスに保存されている証拠データを入手できなければ、調査そのものが成り立たず、内部不正や情報漏洩の解明が困難になります。しかし、調査対象物の取得には法的な課題が伴うことが多く、適切な手順を踏むことが求められます。本記事では、調査対象物の取得方法と、それに伴う法的課題について詳しく解説します。



調査対象物の取得とは?

調査対象物とは、デジタルフォレンジック調査の対象となるデバイスやデータのことを指します。これには、PC、スマートフォン、USBメモリ、クラウドストレージなどが含まれます。調査対象物を適切に取得することは、証拠保全の第一歩であり、調査の成功を左右する重要な要素です。


社内デバイスと個人デバイスの取得方法

デジタルフォレンジック調査において、社内で使用されているデバイスと、従業員が個人的に所有しているデバイスの取得方法は異なります。それぞれのケースでどのようにデバイスを取得するか、またその際の法的課題について見ていきましょう。


  1. 社内デバイスの取得方法 企業が所有するPCやスマートフォンなどの社内デバイスは、通常、社内ルールに基づき調査のために回収することができます。雇用契約や就業規則にデバイス提出義務が明記されている場合、従業員が使用している社内デバイスを提出させることができ、調査の円滑な進行が期待できます。

  2. 個人所有デバイスの取得方法 調査対象者が個人所有しているデバイス(スマートフォンやタブレットなど)を提出させるには、任意の協力が必要です。多くの場合、雇用契約にデバイス提供義務がないため、調査対象者が提出を拒否するケースもあります。


ケーススタディ:個人デバイスの取得が難航した事例

あるIT企業で、従業員が外部に機密情報を漏洩した疑いが生じました。この従業員が使用していた社用PCから一部の証拠は見つかったものの、決定的な証拠が含まれているとみられる個人所有のスマートフォンの提出を拒否されました。雇用契約には個人デバイスの提出義務が含まれていなかったため、調査が進まず、最終的に訴訟に持ち込むための決定的な証拠が不足したままとなりました。

この事例では、個人デバイスの取得が事前に契約上明確に規定されていなかったことが、調査の進行を妨げた典型的なケースです。


調査対象物の取得に伴う法的課題

調査対象物の取得には、いくつかの法的課題が伴います。これらの課題を適切に理解し、対応策を講じることで、調査の妨げになるリスクを最小限に抑えることができます。


  1. デバイス取得のための裁判所の令状 個人所有のデバイスが調査対象となり、従業員が提出を拒否した場合、強制的にデバイスを取得するには裁判所の令状が必要です。これは特に、犯罪捜査や刑事事件に発展する場合に適用されます。このような手続きが必要な場合は、企業の法務部門や弁護士と連携して対応する必要があります。

  2. 就業規則や雇用契約の明確化 デバイス提出義務を明確にするためには、雇用契約や就業規則の整備が不可欠です。これにより、従業員が調査対象となった場合、協力を得やすくなります。特に、情報漏洩や不正行為が疑われる場合に、デバイス提供を義務づける条項を契約に明記することが重要です。


ケーススタディ:成功事例

ある大手製造業の企業では、事前に整備された就業規則に基づき、調査対象者が使用していた社用PCと個人スマートフォンの両方を提出させることができました。調査は迅速に進み、デバイスから削除されていた重要なデータも復元できました。最終的にこのデータが決定的な証拠となり、企業は大きな法的トラブルを回避することができました。


調査対象物取得時の対策と法務の連携

調査対象物の取得にあたっては、適切な法的対応が不可欠です。特に、デバイス取得における課題を解決するためには、雇用契約や就業規則の整備、個人情報保護法の遵守、必要に応じた令状取得などを適切に実施することが求められます。企業の法務部門や弁護士と連携し、これらの対応を事前に講じることで、調査がスムーズに進行する可能性が高まります。


まとめ

デジタルフォレンジック調査において、調査対象物の取得は調査の成否を決定づける重要なステップです。特に、個人所有デバイスの取得方法においては、法的な課題が伴います。就業規則や雇用契約書の整備など、事前に適切な対策を講じることで、調査の円滑な進行をサポートできます。調査対象物の取得に関するご相談や法的サポートが必要な場合は、SIPにお気軽にご連絡ください。四大法律事務所案件、BIG4監査法人案件、大手メーカー国際産業スパイ案件などで調査リーダーを務めた専門家によるサポートで、セキュリティ対策を支援いたします。

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