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防犯の視点から見た環境デザイン:犯罪を防ぐための空間づくり

防犯対策には、環境デザインが大きな役割を果たすことをご存じでしょうか。犯罪予防環境デザイン(Crime Prevention Through Environmental Design:CPTED)は、環境の特性を活かして犯罪を未然に防ぐ理論であり、1970年代にアメリカで生まれた考え方です。本コラムでは、CPTEDの原則を用いて、犯罪を防ぐための空間づくりについて具体的な方法やポイントを紹介します。



1. CPTEDの4つの基本原則

CPTEDには以下の4つの基本原則があります。それぞれの原則を環境デザインに取り入れることで、防犯効果を高めることができます。


  1. 自然監視(Natural Surveillance): 人々の視線が届く範囲を広げることで、不審者の行動を抑制する。

  2. 自然アクセス制御(Natural Access Control): アクセス経路を制限することで、犯罪者が侵入しにくい環境を作る。

  3. 領域性強化(Territorial Reinforcement): ここは自分たちのエリアであるという意識を高めることで、不審者に対する警戒心を持つ。

  4. メンテナンス(Maintenance): 環境の清潔さや整備状態を保つことで、不正行為を防ぐ。


2. 自然監視を活かしたデザイン

CPTEDの「自然監視」の原則では、人々が見える場所を増やすことで犯罪の抑止効果を高めることが強調されています。


  • 視界の確保: 建物の配置や植栽の設計により、死角をなくすことが重要です。視界が開けた場所では、不審者は行動しにくくなります。防犯カメラも見える位置に設置することで、「見られている」という意識を高められます。

  • 入口や出口の明確化: 入口や出口が見通しの良い場所に配置されていると、犯罪者は逃走ルートを確保しづらくなり、犯罪行為をためらう可能性が高まります。


3. 自然アクセス制御の導入

不審者の侵入を防ぐためには、「自然アクセス制御」の原則が有効です。

  • フェンスやゲート: 敷地の境界を明確にし、無関係な人が容易に立ち入れないようにします。防犯ゲートを設けることで、アクセスを制限しつつ、不審者を特定しやすくします。

  • アクセス経路の制限: 通行ルートを限定することで、不審者が敷地内に入りづらくなります。例えば、通路を一方通行にすることで、監視が行き届きやすくなります。


4. 領域性強化で地域の防犯意識を高める

「領域性強化」の原則では、犯罪者に対して「ここは他人の場所であり、監視されている」と意識させることが重要です。


  • 看板やサインの設置: 「関係者以外立入禁止」や「防犯カメラ作動中」といったサインを設置することで、不審者に対する心理的なプレッシャーを与えます。

  • 住民や従業員の関与: 定期的に防犯活動や清掃活動を行うことで、そのエリアがしっかりと管理されているという印象を与え、不正行為を抑止します。


5. メンテナンスの重要性

「メンテナンス」はCPTEDの原則の中でも見落とされがちですが、非常に重要です。荒れた環境は犯罪者にとって「無関心な場所」として映り、犯罪を誘発しやすくなります。


  • 定期的な清掃: 落書きやゴミが放置されている場所は犯罪が起こりやすい傾向があります。定期的な清掃を行うことで、犯罪者に「ここは監視されている」という印象を与えられます。

  • 壊れた設備の修理: 壊れた照明やフェンスはすぐに修理しましょう。整備されている環境は防犯意識が高く、犯罪者に対して抑止効果を持ちます。


6. 実際にCPTEDを活用するためのポイント


  • 環境デザインの見直し: 防犯対策を行う際には、既存の建物や敷地の環境デザインを見直し、CPTEDの4つの原則に沿って改善することが必要です。

  • 地域との連携: 防犯活動は一人や一社で行うものではありません。地域全体で連携し、CPTEDの原則を取り入れることで、犯罪抑止効果を高めることができます。


まとめ

CPTEDの原則を活用した環境デザインは、犯罪を未然に防ぐための強力な手段です。自然監視、アクセス制御、領域性強化、そしてメンテナンスの4つのポイントを意識しながら空間をデザインすることで、犯罪者が行動しづらい環境を作り出すことが可能です。これらの対策を取り入れることで、安全な空間を実現し、地域や施設の安心感を高めることができます。

防犯対策は、機器や警備員だけに頼るものではなく、環境そのものを利用して犯罪の機会を減らすことが重要です。CPTEDの理論を参考に、より安全な空間づくりを検討してみてください。


最後に、SIPでは、病院をはじめとする各施設向けに、防犯対策やカスタマーハラスメント対策を総合的にサポートしています。元警察官や専門家の経験を活かし、現場の状況に即した最適なソリューションを提供します。また、経験則だけではなく、実践理論に基づいた効果的な提案により、お客様の安全に貢献します。私たち独自のフレームワークを用いて、お客様のニーズに合わせた防犯戦略・計画・マニュアルを一緒に構築し、それらを基にした具体的な施策の提案、従業員教育などにより、施設全体の安全を強化するお手伝いをいたします。防犯やカスタマーハラスメント対策に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、を中心に、全国で対応しています。

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